吉里颯洋の年甲斐ない日記

作詞家・吉里颯洋のブログ

【作詞教室・爽塾】2023年後期_Lesson09

私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2023年後期9回目のレッスン・レポートをお届けします。早いもので、このタームもこの日のレッスンを入れてあと4回。取り組む課題も、残すところ、あと2つのみ。受講中の生徒さんには、1作でも多く、卒業までに課題を完成させて欲しいと願うばかりです。

1限目の内容は・・・

さて、今回のレッスンは新しい課題曲の歌詞の内容を決めていく「企画会議」がメインテーマ。昨年の前期から継続受講している生徒さんにとって、新しい課題曲は通算7曲目になります。今回新しく聴いてもらった課題曲の曲調は、少々の寂しさもたたえた、マイナーキーのミディアムテンポのナンバー。メロディの素晴らしさは言わずもがなです。「受講期間中は当たり前のように接している田村信二さん作曲の課題曲のクオリティの素晴らしさは、卒業後に実感することになります」と受講生の皆さんにはいつも同じことを言いますが、今回もまた、「今にもヒットしそうな」完成度です。

そんなメロディに触発されるように生徒さんが考案したテーマは、いつもとは趣の異なる「歌の道を志して社会人になってから地元から上京し、バーテンの仕事をしながら夢を追う30代男性の物語」という内容。これまでは、比較的ご自分の実像に近いピュアな感じの女性目線のラヴストーリーを描いてきた生徒さんなので、このテーマで歌詞を完成させられれば「新しいドア」が開けられますね。こちらから指定せずとも、「男性目線の歌詞を描こう」と思い立ったのは、さらなるスキルアップには絶好の機会です。なぜなら、作詞の楽しさ、醍醐味のひとつは、「年齢や性別を超えて、主人公の心情を描くこと」ですから。自分の作品で言えば、当時55歳の矢沢永吉さんに書いたロックンロールナンバーの「年甲斐ない関係ない限界なんてない」と10代の少女が恋のときめきを歌うwhiteeeen の「ゼロ恋 」では言葉遣いも雰囲気もメッセージの内容もまったく違いますが、書いたのはいずれも私、同一人物です(笑)。

 


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そして、歌詞の企画、構想を生徒さんに発表してもらうと、男性目線の歌詞のせいか、いつもに比べると歌詞の背景にあたるストーリーが若干ファジーな印象。そこで、あれこれと話し合いながら、ストーリーのディテールを一緒に構築していきました。講師というより、プロデューサー目線で「歌詞の主人公に以下のような背景があると、リアリティが向上するのでは?」という提案をした感じです。

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・主人公は歌手になる夢を捨てきれずに上京する前、一度は夢をあきらめ、定職に就いた時期があった

・課題曲のような曲調の歌を歌っていると仮定すると、志向する音楽のジャンルは演歌や歌謡曲ではなくポップス系

・上京してから年月も経っているのでライヴの集客もあり、そこそこのファンも付いている。ただし、惜しいところでオーディションに落選してしまうような状況で、「メジャーデビュー一歩手前」というステージではなく、夢の実現まではまだ距離がありそう

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これまで書いてきた女性目線の歌詞には登場しなかった「なかなか夢が実現しないことへの苛立ち、夢をあきらめない強い気持ち」といった野心家の男性ならではの心情も歌詞のフレーズに落とし込めると良いですね。大切なことは、主人公のキャラクターに合わせたトンマナを徹底したうえで、(曲調はロックではないですが)彼の忸怩たる思いをメロディに合わせて叫ばせることなのかなと思います。

2限目の内容は・・・  

短い休憩を挟んで、過去作のレヴュー(講評)を行いました。

まずは、完成間近のクリスマスソングから。既に骨格の部分はできあがっているため、表現のディテールの底上げを促すためのディレクションを行っていきました。例えば、リピートされる同じフレーズに対して書かれた「会えない夜(よる)も さみしい夜(よる)も」という歌詞ですが、この箇所には、「同じようなメロディがリフレインされる際には、表現のバラエティを 熟考するとベター。ここでは『さみしい夜』の箇所は『会えない夜』と対になるような表現を考えてみて」とアドバイス。

その他、ちょっとした言い回しを再考した方がベターだと思われる箇所に対しては、実際に代案となるフレーズを歌ってみせて修正を提案し、「頭で考えた歌詞がうまくメロディにハマらない時も、早々に諦めず、納得できる最適解を見つけるためには可能な限り、試行錯誤を繰り返しましょう」ということを伝えました。

続いて、別作品のレヴューへ。「恋人との死別から時間を経て、シンガーソングライターの女性が立ち直っていく」作品については、こちらの提案を踏まえた修正後の企画書のみをレヴュー。こちらの提案を踏まえて、ヒロインと恋人の双方がシンガーソングライターという設定は変更され、リアリティが向上しました。「主人公にとって大切な思い出、楽しかった思い出を必ず盛り込みましょう。あの時、あんなことがあったよね。本当に楽しかった。思い出すと、今でもクスッとほほえみたくなる・・・みたいなイメージです」とコメントを添えてフィードバックしました。生徒さんに改めて伝えたのは、「たとえ誰かを励ませなくても、世界でたった一つのストーリーを田村信二さんの美しいメロディに乗せて描ければそれだけでも充分に尊い」ということです。さらにアドバイスをすると、テキストに記載しているとおり、世界でたった一つのストーリーにふさわしいタイトルになればベターです。

以下、生徒さんのコメントです。

 

そんなこんなで、今宵のレッスンも無事に終了。

常に最新の課題が優先になるため、未完成の歌詞が溜まりがちですが、ここはラストスパートで力の出しどころかも?

「異性の目線で作詞をする」という新しいドアを開ける楽しみは、一度きりしか味わえません。ぜひ、全力で楽しんでください!

Power to The Songs!

歌に力を!

 

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※毎年、バレンタインデーを過ぎてから消灯するハート型ディスプレイと、その奥に輝くクリスマスツリー。西武所沢駅西口にて撮影。