
『ロッキンスター』と、俺とNOBODY
かつしかFMをキーステーションに全国28局ネットで放送されているラジオ番組「ロッキンスター」は、DJ佐々木健二さんのマニアックな選曲で、時代を超えたロックの名曲たちを紹介していく音楽プログラム。 タワーレコードでの『NOBODYレコードデビュー40周年リイシュー企画』に同期するように、同番組ではNOBODY特集をほぼ隔月でオンエアしてきました。某SNSに今でも存在するNOBODY関連のコミュニティで、私こと吉里颯洋とDJの佐々木健二さんが知り合ったご縁もあり、光栄なことに初回からゲストとしてお招きいただいています。本特集のコンセプトは、「我々共通のルーツであるNOBODYのアルバム1枚にスポットを当てて、その名曲の魅力をファン目線であれこれ語り合う」というもの。
今回は、2024年9月04日(水)、NOBODY7枚目のスタジオ・アルバム『HALF A BOY HALF A MAN』をテーマにオンエアされたトークをテキストにしてお届けします。トークの内容と言えば、熱心なファン2名がNOBODY愛をぶちまけているだけですが、「面白い!」と思ってくださったNOBODYファンの方がいたら、今後のオンエアをお楽しみいただけたら幸いです!
※以降、『J:佐々木健二さん / S:吉里颯洋』と省略して記載します。
「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」と「カモン・ベイビー」の共通点とは?
J 皆さま、ご機嫌いかがでしょうか? 佐々木健二です!さて、まるっちさんからメールが来ておりまして、「なかなかメールが読まれないですが、久々に大瀧詠一さんの特集をしてほしいです。よろしくです!」とありますけども、『Each Time』の特集は全然やってねぇなと思って、いつかやろうかと思ってたんですけど、せっかくなので特集する日にそれに該当するメールを読もうかなと思っておりますんでね。メールを頂ければ、必ず読むと思います(笑)!引き続き、このまんま応援していただければなと思っております。
そういう訳で今週はですね、2ヶ月に1回のNOBODY特集でございますけどもね。とりあえず、オープニングコールだけ言っときますかね。ロッキンスターのお時間ですよ〜 ♪オーブニングテーマが流れる〜
NOBODY特集と言えばこの方、作詞家の吉里颯洋さんでございます。
S こんばんは、吉里颯洋です。よろしくお願いします。
J さて、今日はNOBODYの7枚目のスタジオ・アルバム『HALF A BOY HALF A MAN』の特集で行ってみたいと思いますけれども、オリジナル盤のリリース日は1988年11月21日になります。この番組でNOBODYを紹介する企画をやってる背景としては、タワーレコードから「NOBODYレコードデビュー40周年企画」としてリイシュー盤が続々リリースされている経緯がありまして、全アルバムを颯洋さんと一緒にほぼ隔月で1枚ずつ紹介してます。で、『HALF A BOY HALF A MAN』のリイシュー盤は、2023年の6月28日リリースになってますね。
S これまでに、NOBODYの全アルバムのうち、半分以上は紹介してましたっけ?もう折り返し地点は過ぎたんですかね?
J 半分は過ぎました、ついに。ついにというか、結構前に、折り返し地点は過ぎてます(笑)。でもね、リイシュー盤を聴けば聴くほど、いろいろとあの当時は感じられなかったことがいろいろあって……。
S 発見が多いですよね。
J このアルバムに話を戻すと、打ち合わせの際、僕と颯洋さんが共通して挙げた1曲目の候補が「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」だったんですよね。最初に僕は誤解を恐れずに言いますけども、「このアルバムは、NOBODYが矢沢ファミリー的な(アーシーな)サウンドに原点回帰をしたのではないか?」と思ってます。さらに言うなら、NOBODYにとっては2回目の原点回帰ではないかとも思ってまして。1回目の原点回帰は、ファースト・アルバム。あれで本当に、自分たちのルーツのマージービートに回帰して、(再現されたのが)あのサウンドですから。
S ファースト・アルバムの『NOBODY』のサウンドは、お二人が青春時代に憧れてコピーしたサウンドみたいな感じですよね。
J で、この『HALF A BOY HALF A MAN』では、NOBODYのお二人が矢沢ファミリーで過ごした4年間を彷彿とさせるサウンドが聴けるなという気がしています。本当にアーシーな感じのアメリカンなサウンド、(マージービートから続く)イギリスのブリティッシュロックなサウンドの要素がミックスされたサウンドを奏でていた矢沢ファミリー時代、いわゆる第2の青春というか、なんかそのテイストのサウンドの引き出しをこのアルバムで開けてるんじゃないかなと思ってましてですね。そういや、2007年に僕と颯洋さんは、永ちゃんの「武道館公演通算100回記念ライブ」に行ってるんですよね。
S いい席でしたよね、あの時は。
J 凄まじくいい席でしたよね。(ステージ前方の)せり出しの目の前ですからね。市販されてる(武道館公演)100回目のライヴのブルーレイディスクよりは、『E.YAZAWA ROCK』っていうドキュメンタリー映画の方が、割と俺と颯洋さんが写ってるんですよ(笑)。
S 今度、観てみよう(笑)。
J その2回後に、102回目の武道館ってのは、その年の武道館ライヴの最終日だったんですけど、僕たまたま行ってたんですよ。
S 俺も、その日のライヴに行ってたと思います。
J その日のライヴで「アンコールなんだろうな?」と思ったら、相沢さんと木原さんがステージに出てきて、もう飛び上がって喜んだのを覚えてますよ。その時に「カモン・ベイビー」を演ってるんですけど、なんか親しみがあるなと感じた覚えがあって……。はい後に、YAZAWA CLUBから出たその夜のビデオで改めて聴いてみると、「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」のギターソロがまんま再現されてるじゃん!っていうことがありまして……。
S すごい、大発見!
J 本当、木原さんの弾いてるフレーズもほぼほぼ同じでしたね。
S 私見ですけど、まずはきっと矢沢ファミリー時代の「カモン・ベイビー」が根っこにあって、それをこっち(『HALF A BOY HALF A MAN』)でいい音で再現したみたいな感じなんじゃないですか?
J たぶん、そんな感じがするんだよなぁ。
S 永ちゃんのライヴで、NOBODYの「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」を宣伝しようとか、そういう気持ちはまったくないと思いますね。
J はい。同感ですね。今回のリミックスを聞くと、相沢さんのギターが左のスピーカーから聴こえてきてシャッフルのリズムでバッキングを弾いていて、右のスピーカーから木原さんのスライドギターが聴こえてくるので、ちゃんと振り分けられてますね。オリジナル盤の方だと、ギターのLRの振り分けが逆になってたかな、確か。今回のリミックスだとギターがちょっと音量大きくなってるんで、相沢さんのバッキングもすごいドライヴ感があって、カッコいいんですよ!
S この曲の歌詞の内容は、若い世代のちょっと頼りない感じの若者に檄を飛ばすような感じではあるんですけど、この曲には矢沢ファミリー時代の「カモン・ベイビー」的なテイストがあるだけに、どうしても『矢沢ヒストリー』で観た1977年の武道館公演のあのシーンが目に浮かんできちゃうみたいな感がありますね。
J ちなみに、『矢沢ヒストリー』に入ってる77年の武道館ライヴのシーンを見直すと、この「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」よりもっと激しいスライド(ギターのフレーズ)でした!木原さんのギターが♪ギャギャギャ、ギャー、ギャーギャって、「クレイジーだな」ってぐらいにうなってましたね。(聴く人が聴けば、思い出すのは)矢沢ファミリーだろうっていうふうに思えるサウンドですので、じゃ、颯洋さん、1曲目を紹介してください!
S NOBODYで、「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」♪〜〜曲が流れる〜〜
J 今夜の「ロッキンスター」は作詞家の吉里颯洋さんをお迎えして、NOBODY7枚目のスタジオ・アルバム『HALF A BOY HALF A MAN』を紹介しております。
オリジナル盤は、1988年11月21日にリリースになっております。まず最初に聴いてもらったのは、「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」でございました!いかがでしょう。
S いやぁ、しびれますね!今さらながら、これを1988年当時に出してたっていうのはすごいなっていう……。80年代、浮かれた世につれてヒット曲の曲調もちょっとチャラかった時代に、ブルージーでいなたいロックをNOBODYが高らかにぶっ放していた事実に、バンドマンとしての漢気を感じますね。
J この前のアルバムが『GOT A FEELING』じゃないですか。その前が『RESTLESS HEART』で、その当時、(他のアーティストに)提供していた曲にも変換できそうな(ポップでキャッチーな)曲がいくつかあるんですけど、このアルバムからは、何かそういうタイプの楽曲がほとんどないような感じがしますね。
S そうですね。当時の日本のロックシーンを見渡せば、「永ちゃん以外で、こんな曲調のロックナンバーを誰が歌えるんだ?」って感じですよね。
J そうっすね。マジで僕と颯洋さんの最初の繋がりっていうのは、やっぱ永ちゃんで、我々のコネクションはそこから始まりましたからね。「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」に話を戻すと、相沢さんが弾いてるシャッフルのバッキングのフレーズですけど、トシヤナギさんの弾くフレーズとは一味違っていて。♪タッタ、タッタではなく、♪タッタ、タカタ〜 に聴こえるんですよね。そこに一筋縄ではいかない奥深さを感じるというか、すごくドライヴ感があって、俺、相沢さんのあのギターは大好きなんですよね。
S なるほど。「このグルーヴのルーツは誰ですか?」みたいな、本当に我々が知りたいミュージシャンとしてのアイデンティティみたいなことは、幸か不幸か、オフィシャルに残されているライナーノーツとか、どこにも書いてないんですよね。
「UP ON THE ROOF」を深掘りしてみた
J さっき、「矢沢ファミリー的なサウンドへの原点回帰」って言った根拠としては、1曲目の「UP ON THE ROOF」を当時リアルタイムで聞いてて、すぐに、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの、『Déjà Vu(デジャ・ヴ)』っていう馬鹿売れしたアルバムがあって、そのアルバムの収録曲の「Carry On」のイントロに似てるなと思ったんですよ。デヴィッド・クロスビーは元バーズでアメリカのバンド、スティーヴン・スティルスは元バファロー・スプリングフィールドでこれもアメリカのバンド、ニール・ヤングもアメリカ出身で、グラハム・ナッシュが在籍したのは、イギリスのバンドのホリーズなんですよ。何が言いたいかと言うと、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングには、アメリカのロックのテイストとイギリスのロックのテイストがいい塩梅に入り混じってる感じがあって、矢沢ファミリーのサウンドも似た印象があったんですよね。イギリスとアメリカのロックのいいとこ取りみたいな感じもあって、勝手に「これは原点回帰をしたんじゃないか?」と思ったんですけど……。
S 「Carry On」は何年ぐらいの曲なんですか?
J 「Carry On」はですね、1970年に出た曲ですね。ちょっとだけね、イントロだけ聴いていただこうかなと思うんですけど、まずNOBODYの「UP ON THE ROOF」からいきますね。♪イントロが流れる〜
これが「Carry On」だとどうなってるかというと、こういう感じなんすよ。 ♪イントロが流れる〜
だいぶニュアンスは似てるんじゃないかなっていう気はしてますね。たぶん、アコギをダウンピッキングでストロークする際に、うまくミュートとかしながら、ズックチャグ、チャグっていうノリのを出してるんではないかなっていうふうに想像してまして。左手で調整する弾き方は、NOBODYの2人も何かそれっぽい感じで弾いてるのかなという仮説です。 永ちゃんの「バイバイ・サンキュー・ガール」のバッキングをよく聴くとね、♪チャーンチャ、ツクチャカチャカみたいに、空ピッキングみたいな音が入っていて、「弾いているのはたぶん相沢さんかな?」とは思うんですが、なんかそういう空ピッキングも入れつつ、リズムを刻んでる感じが絶妙だなと……。
S リリース当時、ライヴの時は、「UP ON THE ROOF」みたいにアコギで始まるようなフレーズは、どういうふうに演ったんですかね?
J 日清PowerStationでのライヴのビデオを見ると、残念ながらピアノでやってました。
S イントロだけ、アコギに持ち変えたりはしてないってことですね。
J そういや、颯洋さんが(ドゥーワップグループの)ザ・ドリフターズの「UP ON THE ROOF」から、タイトルを借りてるんじゃないかっていう説もおっしゃってましたが……。
S そうだと思いますよ。アルバムタイトルの『HALF A BOY HALF A MAN』も、ニック・ロウの有名な曲から拝借してると思いますし……。
J そうなんですか? そうだ! ニック・ロウの曲にあるわ!
S 「ニック・ロウのライヴを観たら、ベースで弾き語りやってて、『何じゃこりゃ』って思ったよね」って、ライナーノーツで相沢さんが言ってますね。ニック・ロウはNOBODYのお2人よりはちょっと年上で、あのサウンドは「パブロック」って言われてますけど、イギリスでは比較的ルーツ・ミュージックに根ざしたような音楽性で長く活動していて、NOBODYから見れば先輩みたいな存在だと思うんですよね。
J なるほど。ドリフターズの「UP ON THE ROOF」は、どう繋がってるんですか?
S これは単純に、歌詞のストーリーの展開上、このタイトルがうまくハマったんじゃないかという推理ですね。世の中のいろんな動きを屋根の上から俯瞰して見下ろしてるみたいな設定の歌詞に既存のタイトルがフィットしたのではと思ってます。
J 僕、ちなみにドリフターズの「UP ON THE ROOF」も好きなんです。(ボリュームを落としてバックに「UP ON THE ROOF」が流れる)♪UP ON THE ROOF〜
俺、これ中学1年生の頃、大好きだったんですよ!今聴くと、こんな牧歌的な感じではありますけど……。
S 確かに、タイトルは同じでも、曲調に共通点はないですね(笑)。
J そうですね。タイトル見た時に、「どっかで聞いたことある」って思いつつも、颯洋さんみたいにパパっと思いつかなくて、後から「そうか!」とは思いましたけども、矢沢ファミリー時代のサウンドを彷彿とさせるサウンド「BOOGIE WOOGIE DOCTOR」「UP ON THE ROOF」みたいな曲があったので、「このアルバムが、NOBODYにとっての2回目の原点回帰ではないか?」っていう仮説を立てたということで、これを言ったら、このアルバムに関して俺が言いたいコメントはもうおしまいです(笑)。
野球少年たちのほろ苦い思い出を歌った名曲
さて、次の曲ですけども、僕と颯洋さんが、「これはぜひ!」っていう思いで一致した曲ですね。「SILLY BILLY BOY」。これは、どういった選曲理由で?
S これは、サウンド的には、カントリー・スタイルの演奏ですよね。ファースト・アルバムには「TELL YOUR MAMA」っていう曲があって、マージービートのバンドがカバーしてるカントリー調の曲って感じですけど、こちらはより泥臭くというか、アメリカの奥深いエリアのカントリーなサウンドを再現してる的な感じがあって、そこが魅力ですね。歌詞もすごく楽しい話なんですけど、「子供の頃にちょっとトロい感じのビリーくんっていうのが同級生にいて、彼をからかってた遊んでいたけど、今はどうしてんのかな?」みたいなストーリーで……。でも、♪あの夏は帰らない Please forgive me Silly Billy Boy って歌われてますけど、サビの最後の1行で「俺を許して」って言ってるんで、少年時代にからかってた友達に「ごめんな」って謝罪してるんですよね。
J なるほど。そうなんだ。
S で、「Sily Billy」って辞書を引くと出てくるんですけど、「ちょっと間抜けな」みたいな感じのワードがあって……。木原さんが作った曲の中ではすごい大好きで、ランキングの上位にくる曲っていうか、すごくお気に入りですね。
歌詞でお気に入りのフレーズがありまして、♪ルールは知らないベースボール 真横にかぶったキャップ 綺麗好きなパン屋の門で風のように笑う〜 ってところの「ルールは知らないベースボール」っていうフレーズが絶品だなと。子供の頃、空き地で楽しんでいた「野球ごっこ」では、とりあえずボールを投げてバットで打つのは知ってたけど、細かいルールは適当だったみたいな(笑)。
J なんか「楽しい!」っていう感じですよね。(野球をやるというより、シンプルにボールを投げて打つという行為の)楽しさの方が優ってるっていう感じの気持ちが出てますよね。僕は「SILLY BILLY BOY」は、昔、僕が23、24歳くらいの頃だったか、今から30年ぐらい前の話ですけど、当時、ギターで飯食ってる年上のお兄ちゃんがいて、その人に曲を聴かせたところ「NOBODYってすごいね。カントリー調の『SILLY BILLY BOY』は途中で3拍子が入るんだよね。普通はそんな発想ないよ!」とか言われたことがありまして……。「確かに、言われてみればそうだわ!」と思って、それからこの曲の何か魅力がぐっと深まった覚えがありますね。先ほど颯洋さんがおっしゃってたように、ファーストアルバムの「TELL YOUR MAMA」は確かに「イギリス人がやったカントリー」みたいな風情がありますけど、こっちはもう本格的にアメリカン・テイストっていう……。ただ、今回のこの2023年リミックスをオリジナルと聴き比べてみたんですよ。そしたら割とね、バンジョーとかそういうカントリーテイストの楽器の音(のバランス)がオリジナル盤よりも低めになってるんですよ。で、ギターの音をミックスで上げて、より中心に出してる感じなんで、「ギターバンドとして、改めてこのアルバムを再定義して出したい」っていう風に相沢さんは考えたのかなって推理してるんですけどね。
S この曲のレコーディングには、カントリー畑のゲスト・ミュージシャンの方も呼んでますから、このアルバムにはルーツ・ミュージックへのアプローチにもトライしようっていうコンセプトを感じますね。
J オリジナル盤の制作のタイミングでは、きっとそういう狙いですよね。ただね、絶妙にかっこいいのが、その三拍子の後だったと思うんですけど、最後のサビの繰り返しで♪ルールは知らないベースボール〜 の箇所で、相沢さんが(歌って)♪ルールは知らないベースボール〜 みたいにハイパートで(上下しない)まっすぐなメロディでハモリのパートを歌ってるんですよ。なんかね、「PLEASE PLEASE ME」みたいでカッコいいっスよ。ちょっとしびれましたね、あれは。そんなこんなで、これは魅力満載の曲だなと思ってますけど、曲紹介をお願いします!
S NOBODYで「SILLY BILLY BOY」。♪〜〜曲が流れる〜〜
名曲「ANGELITA」の舞台はどこなのか?
J 今夜の「ロッキンスター」は、作詞家の吉里颯洋さんをお迎えして、NOBODY7枚目のスタジオ・アルバム『HALF A BOY HALF A MAN』を紹介しております。オリジナル盤は、1988年の11月21日にリリースになってる名盤ですが、今夜ご紹介しているのは、2023年の6月28日にリミックスを加えたリイシュー盤ですね。後半はちょっと颯洋さんに歌詞についていろいろ伺いたいなって思ってます。前半は、主に僕がサウンドのことをしゃべらせてもらいましたが、まずは「ANGELITA(アンジェリータ)」。
S これは自分がすごく惹かれるのは、恋人同士のカップルの日常を歌った歌なんですけど、主人公が、「工場の裏口でおまえを待ってる」っていう描写があって、彼女が仕事が終わって出てくるっていう、そういうブルーカラー、労働者階級のカップルの話なんですけど、この歌で「木原マジックだな」って思うのは、古き良き時代のアメリカの映画を見てるような、そういうテイストがありますよね。あえて言うなら、ブルース・スプリングスティーンの故郷のニュージャージーみたいな場所が脳裏に浮かぶというか……。キラキラした都会のニューヨークの隣の州の垢抜けない街のどこかみたいな、そういう少しさびれた風景が浮かんでくるようなリアルな情景描写が見事だなと思いますね。自分が好きな歌詞のフレーズをいくつか挙げると、「♪安物バックにくすねてくるチキンはもういいから愛が欲しい」とか、「♪形のいいお前の耳を噛めば 今日もきっとチキンの匂いがするんだろう」っていう表現は絶妙だなと……。やたらとチキンが出てくるから、お弁当なのかチキンサンドとか分からないですけど、ヒロインは食料品の工場で彼女がバイトしてるっていう設定ですよね。「♪盗んだ車を売り飛ばしてカモメより速いジェット機で 永遠の自由が待ってる終わらない週末はパラダイス」っていうフレーズも秀逸で、「盗んだ車を売り飛ばしたら捕まっちゃうじゃん!」って突っ込みたくなるんですけど、そういう「キレイな夢を見て、歌が終わる」っていうのがいいなと思って……。
J なんか『アメリカン・グラフィティ』の頃の50'sみたいな世界観を連想しちゃいますよね。
S そうですね。このアルバムがリリースされた80年代の後半とかじゃなくて、もうちょっと昔のアメリカの映画をモノクロで見てるような感じがしますよね。
S 僕はね、この「ANGELITA」の歌詞を読んでると、印象は颯洋さんと同じなんですけど、「昭和の小津安二郎さん監督の映画の世界観みたいな感じだけど、セットだけがアメリカ」みたいな印象もありまして……。日本人が作るアメリカ風のドラマというか、勝手なイメージなんですけど、ヒロインの女のコってネッカチーフ巻いてる人なんですよ。「♪赤い顔した守衛がにらむ〜」ってフレーズがあるから、「その守衛もろくでもない奴だろうな。仕事中に酒飲んでんじゃねぇかな?」って感じの想像をしてましたね。
S そうですね。恰幅(かっぷく)のいい赤ら顔の守衛さんがいかにも暇を持て余している雰囲気ですね。
J でも「♪守衛がにらむ」って歌ってるから、主人公の男の方って、実は無職なんじゃねぇかっていう予想もありまして。なんかその風来坊的な感じがあって、女の子が一生懸命働いてて、でもその女の子は男の子がとっても好きでっていうシチュエーションをイメージしてました。それが何て言うんだろう?「日本の雰囲気にも合うけども、やっぱりストーリーの舞台としては、どうしてもアメリカなんだよな」っていう……。
S なんかジェームス・ディーンに憧れてるような主人公で、格好は真似してるんだけど、そんなにかっこよくないみたいな(笑)。一応、ちょっとボロい感じのオープン・カーで工場に乗り付けて……。おそらくはちょっとボロい感じの車だろうなと。
J 気持ちはオープンカー(笑)。わかるわ、それ。俺の中の勝手なイメージですけど、歌詞に出てくるチキンは、素揚げをしてるチキンなんですよ。フライドチキンじゃなくて、衣がついてない奴ですね。(余り物か何かを)工場で支給されてるから、今日の夕飯のために持ってきたんじゃないかっていう感じの健気な女の子(笑)。でも付き合ってる男の方は盗んだ車売り飛ばして、悪い奴だなみたいな(笑)。
S 「くすねてくるチキン」だから、きっと本当は1人分しかもらえないのに、なんかお友達の分までもらっちゃったみたいなとか(笑)。
J となると、バッグの中が割と脂っぽいっすよね。
S バッグどころか、着てる服とか、あちこちからチキンの香りが匂ってきそうですね。
J (歌詞の舞台は)チキンの加工工場なんじゃないすか? 職場からちょっと、余り物を盗んできたみたいな……。
S でもこの時代、80年代後半に、メジャーシーンで活躍してるソングライターがこういうワーキングクラスの人々の日常を歌にしてるのは、あんまり聞いた覚えがないっていうか……。ストリートの歌を歌うアーティストだと、浜田翔吾さんとか、佐野元春さん、尾崎豊さんとかいましたけど、もうちょっとキラキラした感じのストーリーですよね。こういう「彼氏が工場の裏口で待ってるカップル」の話とかじゃなくて……。
J シャネルズのファースト、セカンドアルバムあたりっていうのは、こういうワーク・ソングみたいな楽曲がそこそこあるんですけど、そこから醸し出されるイメージは、川崎とか大森とか蒲田とか、いわゆる京浜エリアというか、そっちだろうなっていう感じがしますね。
S なるほど!
J 俺、ワークソング、好きなんですよね。NOBODYの「ANGELITA」の場合は、(イメージされる風景は)日本じゃなくて、やっぱり、アメリカ寄りだな。
S まったくの私見ですけど、感じるのはアメリカですね、これは。イギリスじゃないんだよね。 J アメリカのちょっと(郊外にある)工場の周辺に舗装してない道路が見えてくるような感じですよね。サウンドの話をすると、イントロの♪ズンジャカジャジャジャーン、ジャンジャンジャ、ジャラジャッチャーていうギターのフレーズは相沢さんが弾いてるんですよ。
以前のオンエアで「僕が好きだ」ってお話した覚えがあるんですけど、『GOT A FEELING』に入ってる「SUMMER'S GONE」で聴ける相沢さんのギターの奏法で「ドリル・イントロ」とかって何か言ったの覚えてます? これですよ。♪「SUMMER'S GONE」のイントロを流して〜 こういうふうな ♪トゥルル、トゥルル、ラッタッタ〜 ていう相沢さん得意のフレーズがありますけど、「ANGELITA」もその類ではないかっていう……。やっぱ相沢さん、そういう(ちょっとトリッキーでカッコいいフレーズでイントロのフレーズを作る)のがうまいんだよな。
S 永ちゃんの曲でもありますよね、『ゴールドラッシュ』あたりの曲で、こういうフレーズを聴いた覚えがあるような?
J 今ぱっと出てこないけど、あるはず。でも以前に、フレーズだけ抜き出してご紹介した「昨日を忘れて」のオブリガードのフレーズもあの感じだと思うんですけど、(相沢さん得意のフレーズで始まる)イントロがまず好きだっていうのと・・・。
S あと、なんかマンドリンっぽい音色に聴こえるソロパートが良いですよね。
J あの音はアコギかなぁと思いつつ、やっぱり、マンドリンかなぁ、やっぱり。
S マンドリンじゃないですかね?
J (ギターじゃなく)そっちだろうな。なんか、マンドリンが結構入ってますもんね。やっぱりね、この曲もギターが強めに出てて、特に右スピーカーから出るアコギのバッキングの♪ズッチャン、ズッチャン、ズッチャンっていうサウンドが気持ちいいぐらい出てるんですよね。(リードヴォーカルで作者独りが歌うのではなく)木原さんが歌って、相沢さんが歌って、サビに行ってっていう流れも楽しい感じではあるんですけども……。
S いい感じだと思いますね。
J では、曲紹介を!
S NOBODYで、「ANGELITA」。♪〜〜曲が流れる〜〜
逃げろ、NOBODY!
J NOBODYの7枚目のスタジオ・アルバム『HALF A BOY HALF A MAN』の中から、「ANGELITA」でした!実は、このアルバムのリリースの翌年のツアーは参加した思い出があって、パンフレットを持ってるんですよ。それを見ると、多分ですけど、3ヶ所しか、会場の名称が書いてなくて。記載されてる会場が1189年の1月14日が渋谷公会堂で、17日が大阪厚生年金会館なんですよ。1月18日が愛知の勤労会館になっているので、このツアーでは、3ヶ所しかライヴをやらなかったのかなと思っているんですが、自分が「渋谷公会堂に本当に行ったのだろうか?」と思うほど、記憶が曖昧なんですよ。ただ、手元にある以上、パンフレット買ったのは確かな訳で。
S でも実際に会場まで行ったから、パンフを買ってる訳ですよね。名古屋とか大阪まで遠征して行ったんじゃなければ、実際に行ったのは渋谷ですよね。
J おそらくこの頃あたりから、ネット上とかでも、NOBODYのツアーの情報が乏しくなってくるんですよ。だからこの辺をいろんな人に聞いて、ちゃんと整理したいなとは思ってるんですけど、購入したパンフレットはお二人のインタビューが掲載されていて、すごく面白かったんですよね。
颯洋さんにもパンフの画像をお送りしましたけどね。割と前半は矢沢ファミリー時代の話をしていて、後半は歌詞に話していて……。そういう意味でも、何か吹っ切れてるんじゃないかなっていう印象はありましたね。
S これが7枚目ですよね?あれ、ファーストが何年でしたっけ?
J ファースト・アルバムのリリースは、82年!
S ってことは、デビューから6年ぐらい経ってるのか。吹っ切れたって言ったら変ですけど、デビュー前の矢沢ファミリー時代のことまでフランクに話せるような心境になってたんじゃないですか?
J そういう心境もあって、こういった(矢沢ファミリー時代のサウンドにも通じるアメリカのルーツミュージックにまで回帰した)サウンドにもなってるってことなのかなっていう気もしますね。お二人の心境として「あの頃は面白かったよ。このアルバムのサウンドもイイでしょ?」みたいな感じの雰囲気なのかなっていう印象があって、『HALF A BOY HALF A MAN』というアルバム全体に、結構とんがってるテイストの歌詞が多いように思えていて……。
S そうですね。自分が気づいたのは、どこかから抜け出すっていうか、現実逃避的なフレーズや表現がそこそこあって、「ANGELITA」でも、♪いつかこの暮らし抜け出して 南の国で2人パラダイス〜 とか、♪カモメより速いジェット機で 自由が待ってる終わらない週末はパラダイス〜 っていう感じで、でつらい日常を抜け出して遠くまで行こうぜみたいなフレーズがあるんですけど、さらに「BOY ON THE RUN」って曲でも、♪自由になりたい 転がり続けようぜ、いつでも見えるぜ 走れば何かが みたいな一節もあって……。そういうタイトルどおり、「逃げる少年」みたいなテーマですけど、探していくと、いくつかの歌の各所にそういうフレーズがあるんですよね。その中でも自分が特に推してるのは、「七番目のHEAVEN」っていう曲なんですけど、これは本当に「衝動的に会社辞めて、空港からマイアミ行きの飛行機に乗っちゃうぜ」みたいな、そういう「ちょっと現実にはそれはないでしょう?」みたいなシチュエーションではあるんですけど、自分が思ったのは自分が好きなコミックで「BLACK RAGOON(ブラック・ラグーン)」っていう広江礼威先生の名作がありまして、その作品の世界観と微妙にリンクしてる印象がありましたね。ロアナプラっていう架空のアジアの町が舞台になっていて、商社マンだった主人公が海外出張先でトラブルに巻き込まれた挙句、ちょっと非合法なヤバい世界に行っちゃうみたいな、そういうストーリーなんですけど、そういうシチュエーションになると、昔の上司が現地まで説得に来て「岡島くん、会社に戻りなさい」と言われても気持ちがサラリーマンには戻らないんですよね。ここで歌われていることが「現実をぶっちぎって、別世界に行きたい」っていう主人公の妄想だったとしても、「BLACK RAGOON」の主人公のロックの姿がちょっと頭をよぎりましたね。何か80年代って、「頑張れば夢が叶う」的なポジティブなテーマの歌が多かったんですけど、そういう画一的な風潮にNOBODYが「NO!」って言ってるような感じがしますよね。
J 当時のパンフレットで読んだ木原さんのインタビューのコメントだと、「他のアーティストに提供する曲はちょっと力抜いた方がいいんだって気がついた」とかって言ってるんで、もしかしたらいわゆるヒット・シングルになるような曲をずっと作らなきゃっていうプレッシャーがある中での仕事だったかと思うんですが、「もうそれもどうなのよ?」っていうのをちょっと思い初めてたのかなっていう……。
S しんどいですよね。「誰それのシングル用に、すごい曲書いてください!」って言うのは簡単だけど、頼まれて書くとなると作る方は大変ですから。NOBODYとしての活動も維持しつつ、プレッシャーの中でヒットメイカーとして作曲の仕事も並行してやっていくのは、結構ハードな日々だったんじゃないかなと想像しますね。自分らの活動以外に、そういうハードルの高い注文がどんどん来るわけだから。
J だから、(当時は何かと規制が多かった)東芝EMIからハミングバードに移籍して、「もう自由にやらせてもらいます」的な気持ちもあったのかなと……。
S 開放感っていうか、「もういいでしょ?」みたいな(笑)。
J でも、「常識はちゃんとあるから!」っていう意味も込めつつ、このアルバム・タイトル『HALF A BOY HALF A MAN』なんじゃないか?って勝手に思ってますけど(笑)。やっぱり、「大人の常識はあるけども、少年のような反抗的な気持ちも消えてないぜ」みたいなことなんだったりして勝手に思ってるんですけどね(笑)。「七番目のHEAVEN」のイントロのギターは木原さんが弾いてると思うんですけど、冒頭の♪ジャカジャカジャカジャジャ、ジャカジャカジャカジャジャ〜 ってフレーズがあるじゃないですか。あれ、実際にギターで弾くと、すごい激しいんですよ。あのイントロのフレーズをもっと歪ませると、ハードロックの中でもさらにハード目(?)なサウンドになっていって、ピッキング(のタッチ)も聴き取れなくなるはずなんですよ。だから、木原さんの弾き方は、絶妙な歪みなんすよね。その絶妙な塩梅がすげえかっこいいっていうのと、ベースがかなりうねってるんですよ。これも聴きどころとして楽しめると思いますけども、曲に行きましょうか?
S はい。NOBODYで「七番目のHEAVEN」。♪〜〜曲が流れる〜〜
J 今夜のロッキンスターは作詞家の吉里颯洋さんをお迎えして、NOBODY7枚目のスタジオ・アルバム『HALF A BOY HALF A MAN』を紹介いたしました!えーと、5枚目のアルバムの『RESTLESS HEART』の特集した際に「間違って、同じアルバムを2枚買っちゃったんですけど、どうします?」みたいな話になって「リスナーの方にプレゼントしましょうか?」っていう話だったんですよね。そろそろ年末も近づいてきますし、次回のNOBODY特集をやるとしたら、このペースでいくとたぶん1月かな? なので、クリスマス・プレゼントとお年玉プレゼントも兼ねまして、『RESTLESS HEART』はこれプレゼントでいいですか?
S はい。ぜひ!NOBODYのアルバムを持っていない方のお手元に届けば、うれしいですね。
J はい。そういう訳で、『RESTLESS HEART』もなかなか素晴らしいアルバムでございまして、幸運にもゲットできた方は、改めてじっくりと聴いていただきたいなと思いますね。話を戻しますと、こうやって聞いてみると、『HALF A BOY HALF A MAN』は本当のNOBODYと言うか、「これが真・NOBODYだったりして」みたいに思うところもあるんですけど……。
S そうですね。なんかもう「素のNOBODY」っていうか、何も飾らない、2人のミュージシャンとしてのリアルな姿が一番出ている良いアルバムかなって思いますね。
J 以前までのいわゆるヒット曲を連想させる(セルフカバーなどの)曲が入ってるアルバムとはもう一線を画してるような感じがするんで、あの頃のNOBODYが好きな人はこのアルバムはちょっと違うかなって思うかもしれないですね。
S そうですね。ルーツミュージックにアプローチしたサウンドもかなりディープなんで、そこは好みが分かれるところかもしれないですね。
J 私らは大好きですけどね。次回のNOBODY特集は、来年の1月になると思いますが、またよろしくお願いします!
S お願いします!
J という訳で、ここまでのお相手は佐々木健二と作詞家の吉里颯洋さんでした!ありがとうございました!
♪「BOY ON THE RUN」が流れる〜〜
リクエスト、メッセージお待ちしてます!
これから特集予定の以下のアルバムの収録曲で、「ぜひかけて欲しい」「いま一度、全国のNOBODYファンに知らしめたい」、そんな曲がありましたら、それぞれの曲への思い入れを添えて、こちらのメールフォームまでぜひお寄せください!
『RARE NOBODY』
『THE SONG BOOK NOBODY』
ARCHIVES
過去のオンエアのトークは、以下の記事で公開しています。
【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#08 『NOBODY LIVE 2』
【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#07 『GOT A FEELING』
【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#06 『RESTLESS HEART』
【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#05 『From A Window』