吉里颯洋の年甲斐ない日記

作詞家・吉里颯洋のブログ

【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#06 『RESTLESS HEART』

『ロッキンスター』と、俺とNOBODY

かつしかFMをキーステーションに全国28局ネットで放送されているラジオ番組「ロッキンスター」は、DJ佐々木健二さんのマニアックな選曲で、時代を超えたロックの名曲たちを紹介していく音楽プログラム。 タワーレコードでの『NOBODYレコードデビュー40周年リイシュー企画』に同期するように、同番組ではNOBODY特集をほぼ隔月でオンエアしてきました。某SNSに今でも存在するNOBODY関連のコミュニティで、私こと吉里颯洋とDJの佐々木健二さんが知り合ったご縁もあり、光栄なことに初回からゲストとしてお招きいただいています。本特集のコンセプトは、「我々共通のルーツであるNOBODYのアルバム1枚にスポットを当てて、その名曲の魅力をファン目線であれこれ語り合う」というもの。
今回は、2024年4月17日(水)、NOBODY5枚目のスタジオアルバム『RESTLESS HEART』をテーマにオンエアされたトークをテキストにしてお届けします。トークの内容は熱心なファン2名がNOBODY愛をぶちまけているだけですが(笑)、「面白い!」と思ってくださったNOBODYファンの方がいたら、今後のオンエアをお楽しみいただけたら幸いです!
※以降、『J:佐々木健二さん / S:吉里颯洋』と省略して記載します。

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J 皆さま、ご機嫌いかがでしょうか? 佐々木健二でございます。今週は2ヶ月に1回やってくる『NOBODY特集』でございます。そのときに欠かせないのが、作詞家の吉里颯洋さんでございます。
S こんばんは、吉里颯洋です。よろしくお願いします!
J 今日はですね、タワーレコードからリリースされてますNOBODYレコードデビュー40周年記念のリイシュー企画の第何弾だっけ? 1? 2? いや、3弾ですね。オリジナル・アルバムとしては6枚目なんですけど、リイシューは2枚ずつ再発されてますから、第3弾ですね。オリジナルは1986年にリリースになってますけども、「(新たに)リミックスをした」っていう点がなかなか味噌でございまして、リイシュー盤は2023年の4月26日にリリースになっております。今日は、それを深く掘っていきたいと思います。よろしくお願いします!っていう訳で、行ってみましょうか。
 『ロッキンスター』のお時間ですよ〜〜〜〜! ♪オープニングテーマ、流れる 

J この「NOBODY特集」の企画も私と颯洋さんの間で徐々にルーティーンが定着してきて、最初の頃は「どの曲を選んで、トークをどうしようか?」なんて思うこともありましたけどね。今だともう、放送終わった直後ぐらいに、もう次のアルバムの選曲に入ってるっていう感じですね。
S ここまでの内容は、かなり濃密に・・・
J 来てますね(笑)。颯洋さんがきちんと選曲リストをエクセルにまとめていただくようになってから、「僕がこの曲選んだ、颯洋さんがこの曲を選んだ、共通してるのはどれ」なんてことがもう一目瞭然になりましたからね。そんな感じで、あれこれ経緯があって決定に至った選りすぐりの名曲を中心に、今日はお話をしていきたいなと思ってます。

相沢行夫少年の「さまよえる心」

さて、1曲目は「RESTLESS HEART」から行こうと思ってるんですけど、これは僕も颯洋さんも共通して「これはイイ!」っていう評価でしたね。
S そうですね。これはアルバムのタイトル曲で、なおかつシングルカットされた曲でもあって、これまでのアルバムでNOBODYがずっと歌ってきた歌詞のテーマである「イノセンス」がこの曲でも歌われてますよね。アルバムのリリース当時、NOBODYのお二人は30代後半ですけど、少年のようなピュアな心情の描写をアルバムのどの曲かに必ず忍ばせてるイメージがあるんですけど、このアルバムでは「RESTLESS HEART」がそういう位置付けかなみたいな選曲理由でしたね。
J うん。僕はリアルタイムで、このアルバムをLPで買いまして、正直、最初聴いた時に「ちょっとインパクトが弱いアルバムだな」っていうイメージがあったんですよ。何となく、「ガツンとこないな」っていう印象があって。もちろん、このアルバムからバンド・サウンドになったのは大きな変化なんですけど、今回のリミックスでサウンドがどう変わってるかをじっくり聴き比べてみました。この曲、「RESTLESS HEART」に限ってですけれども、木原さんが弾いてるパートのオブリガートなどのバッキングが、右スピーカーから左に変更になってるんですよ。さらに、そのギターのレベルがオリジナル盤よりも高めになってる気がしまして。♪そうさ あれは遠い1967年〜(の後に聴こえる)ツックチャカ ズッチャーン〜 っていうフレーズが強めに出てるんですよ。あと、全般的に、サウンドもね、ちょっとオリジナル盤でよりもハードな音に聴こえるんですよね。言うなれば、(ライヴで聴ける)木原さんらしい音、ギターサウンドというか。
S よりエッジが効いてるようなサウンドにしたってことですよね。
J そうですね。1番のA'のところの ♪そうさ 1マイルごとに っていうところの木原さんのバック・コーラスのレベルが少し低めになってるんですよ。だからたぶん、この曲に関しては、「ギター・サウンド中心の曲にリミックスしたっていう解釈かな?」と思ってるんですよ。それまではね、やっぱり、「オリジナル盤はキーボード系のアレンジ」ってイメージが僕にはあるんですよ。だけど今回のリイシュー盤のこのリミックスを聴いてみるとギター・サウンドになってて、(ヴォーカルの処理に関して言うと)2人で歌ってるというよりも(リード・ヴォーカルの)相沢さんが歌ってる曲っていう印象を改めて持ったんですけどね。
S 「さまよえる心」というサブタイトルが付いたこの曲の歌詞 の話をすると、主人公が上京する歌なんで、「西へ向かう長距離バス」で出てくるんですけど、相沢さんは北海道出身で、仮に実体験がベースになってるとしたら、「北海道の地元から西へ向かうバスって、どこに向かうバスだろう?」みたいなことを考えまして、「芦別市から千歳空港の方に向かうことなのかな?」みたいに、いろいろ推理してたんですけど……。
J なるほどね。
S だから同じ時代を生きてた永ちゃん(矢沢永吉さん)は広島から横浜に夜行列車で向かったんですけど、同じ時期に相沢さんは地元の北海道からバスに乗って関東を目指したんだろうなっていうストーリーを思い描いてましたね。何はともあれ、そういう実体験を見事に素敵な歌詞に昇華してるのはさすがだなと。
J では早速、1曲目に行きますか。曲紹介をお願いします!
S NOBODYで、「RESTLESS HEART」♪〜〜曲が流れる〜〜 


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J 今夜は、作詞家の吉里颯洋さんを迎えて、NOBODYのレコードデビュー40周年記念リイシューという企画で、タワーレコードから発売中の『RESTLESS HEART』の特集をお届けしてます。このアルバム、スタジオ盤としては5枚目になりますね。オリジナルのリリースが1986年の9月29日。そして、今夜お届けしている新たにリミックスされたリイシュー盤は2023年の4月26日にリリースになっております。この「RESTLESS HEART」で聴ける(カッティングの)シャッフルのリズムの話をしますと、矢沢ファミリー時代のサウンドを思い浮かべても、この手のリズムはお2人には得意分野かなと思ってるんですけど、たぶんこのアルバムのレコーディングで初めて、NOBODYとしては生のリズム隊を使ってるはずなんですよ。それでやっぱり、「(リアルな)ノリっていうのはやっぱり人間じゃなきゃ、なかなか出しづらかったな」という思いもあったのかなと。
S なるほどね。そう言えば、この曲で初めてNOBODYのシャッフルの曲をガッツリ聴いたかなっていう気がしました。
J 前のアルバム『From A Window』の「PLAY THE BLUES」でちょっとシャッフルとは言えないけども、ちょっとそれっぽい雰囲気はあるんですけど。
S でもあれも、バックのサウンドは打ち込みっぽいっですよね?
J もう完全にね。それに比べて、この「RESTLESS HEART」で聴ける ♪ツックチャカ、ツックチャカっていう(シャッフルの)グルーヴは、やっぱり生(演奏のレコーディング)じゃなきゃ再現できないっていう(判断だったかと)ね。それ(「RESTLESS HEART」)が1曲目だったんで、当時聴いた時には「お!」って思ったんですよ。ただ、先ほど申し上げたように、ちょっとキーボード系の音の方が強かったなっていう印象があったんで、今回のこのリミックスを聴いて、なんかライヴで聴いた時のような印象になってましたね。
S そうですね。おっしゃる通りで、オブリガートであったり、ギターの細かいバッキングのフレーズがちゃんと聴こえてくるので、これがもう最終バージョンというか、発売当時は実現できなかったご本人たちが思い描いていた理想のサウンドが、このリイシュー盤できちんと形になった気がしますね。

切なくも美しい「DEEP IN LOVE」

J 次に紹介する曲は、これまた僕と颯洋さんの選曲が一致した、木原さんの楽曲「DEEP IN LOVE」ですね。レコードで言うと、A面の4曲目に入ってるんですけども……。
S この曲はシングルカットされた「RESTLESS HEART」のカップリング曲で、「愛は胸に深く」っていう日本語のサブタイトルが付いてまして、当時のシングル盤のジャケットにも、確か日本語のタイトルも入ってた気がするんですけど……。
J あのね、「BLUE IN PARADISE」のサブタイトルとして「エデンの東」と、「BYE・BYE・BYE」の「夏の日の少年」っていうサブタイトルは確かにあったはずです。
ただ、俺は、「RESTLESS HEART」のサブタイトル、「さまよえる心」? あれはちょっと、僕は記憶にないんですけど、「実際にあったのかもしれない」というぐらいの認識ですね。
S もしかしたら、シングル盤のジャケットだけに、サブタイトルが入ってたのかもしれないですね。
J なるほどね。話を戻すと、この「DEEP IN LOVE」ですが、歌詞についてはどんな印象ですか? 
S 「昔の彼女が忘れられない」的な切ない感じのラブソングですよね。木原さんの作品で同じテイストの楽曲を探すと、以前の「DARLIN' DARLIN'」もこれまた名曲ですけど、この「大好きだった彼女は遠くに行っちゃったけど、俺はまだ好きだよ」っていういうシチュエーションの切ない心情がリアルに歌われていて。そういう「男の情けなさをポップに歌う」ことにかけては、木原さんのソングライティングは絶品だなと思って、この曲を選びましたね。
J 木原さんの「ちょっと追い詰められた感」みたいな気持ちを表現した失恋系の歌詞っていうのは、ぐっとくるんですよね。
S よく言われることですけど、歌い方とかメロディーにジョン・レノンのテイストを感じるっていうか……。メロディーの感じに、「泣き」のニュアンスがあって、そういう点も好きなんですけど。
J サビの ♪I'm still in love〜 の後でジャーンって鳴るコードがあって、あれはオーギュメントかな? あそこの胸キュン・コードがね、とってもイイんですよ!このセンスにしびれるんですよね。
S さらに言うと、歌われてる心情が本当にピュアだなと思って。本当に20歳ぐらい、20代前半のキラキラした青春時代の失恋の思い出が歌われている感じなんですけど、当時の2人はもう30代後半でしたよね。
J でね、リミックスの話をすると、やっぱこの曲も、バッキングで聴こえるギターがリミックス後のリイシュー盤の方がレベルが高めなんですよ。LR(左右)でアコースティックギターのカッティングの音が、♪ジャンジャンジャンジャン、ジャンジャンって鳴ってるんですよ。もしかしたら相沢さんと木原さんが弾いてるのか分からないんですけど、コーラスでLRに(同じ音を)振ってるんじゃなくて、2本録ってるような感じがするんですよ。ちなみに、1986年リリースのオリジナル音源だと、アコギの音があんまり前に出てないんですよ。それに比べて、こっちはものすごくギターの音が前に出てる。やっぱりこの曲も、相沢さんのコーラスのレベルが低めになってるんですよ。だからやっぱり、なんか、「リードボーカルが誰と明確にしたうえで、聴かせどころはギターサウンド」みたいなコンセプトでリミックスをしたのかなっていう……。
S オリジナル盤より、さらに明確にってことですよね。
J ような気がするんですけど、この曲はなかなか私も好きでして、では曲紹介を!
S はい。NOBODYで、「DEEP IN LOVE」♪〜〜曲が流れる〜〜

J 作詞家の吉里颯洋さんをお迎えしてお届けしている今夜のNOBODY特集のテーマは、1986年9月29日にリリースされたアルバム『RESTLESS HEART』。NOBODYのレコードデビュー40周年記念でリイシュー企画の一環として、2023年4月26日にリリースされたリミックス盤から名曲の数々をご紹介しております。「DEEP IN LOVE」、聴いてもらいました!しかし、いい曲!
S さっき、「DEEP IN LOVE」のサブタイトルを紹介し忘れちゃったんですけど、「愛は胸に深く」っていうサブタイトルがシングル盤のジャケットには、カッコ入りでちっちゃく書いてあって……。NOBODYのアルバムはタイトルが英語で、収録曲もほとんどが英語のタイトルなんですけど、珍しくこのアルバムだけは日本語のサブタイトルがそれぞれの曲に付いてるところが異色ですよね。

リミックスで甦った「タタン!」の謎

J 次に紹介する曲、これも僕と颯洋さん共通の推し曲で、「DA・DA・DA I LOVE YOU」。僕はリリース当時、この『RESTLESS HEART』のアルバムを聴いた時に、最初に聞いたときのインパクトで言うなら、この曲が1番好きでした!
S 自分もね、この曲が1番キャラが立ってるっていうか、第一印象が強かったですね。すごく自分が心惹かれたのは、作者の相沢さんが北海道出身の方なので、何か自分の故郷の風景をうまく歌詞に落とし込んでいるような、そういう印象を受けたんですけど、北国の町並みの描写がすごくリアリティがあって良いなと思いましたね。
ボブ・ディランのセカンド・アルバムに『The Freewheelin' Bob Dylan』ってアルバムがあるんですけど、そのアルバム・ジャケットが寒々しい感じの街角をバックにディランと彼女が腕を組んで歩いてるみたいな写真なんですけど、この曲を聴いた時にちょっと思い出しましたね。そういう北国の街角の描写とこのサビのメロディーのキャッチーな感じが絶妙で、ちょっとこの魅力に抗えないっていうか、NOBODYはもとより、日本のポップミュージックにあんまりないタイプの曲なんじゃないかなっていう印象ですね。
J 歌詞の世界観の話をすると、僕は地元が北国(岩手県)なんで共感するところが多いんですよ。特にこの寒い感じが……。それも好きになった理由のひとつでもあるんですけど、やっぱりこの曲も(これ以前のアルバムの)いわゆる打ち込み系のサウンドからレコーディングが生演奏に変わって、より表現しやすくなったリズムのちょっと複雑なノリというか、その良さが出てるなっていうのがありますね。あと、「DA」という言葉を(リピートして)サビにしちゃうっていうところがとても斬新だったなと……。
S 確かに、♪DA DA DA DA だけど〜 って、あまり聴かない言い回しですよね。
J これはね。なんだっけ(笑)? フラミンゴスじゃなくて、マンフレッド・マンの ♪Do Wah Diddy Diddyの冒頭の ♪ドゥーワディディディディ ダンディディドゥ〜 とちょっと近しいものがあるなぁと思ってですね(笑)。
S 加えて言うと、♪DA DA DA DA に続く、♪だけど I LOVE YOU だけどGOOD BYE〜 っていう本当にシンプルな言葉だけで構成されたサビの歌詞が絶妙なクオリティですよね。言葉だけで説明するんじゃなくて、メロディと一体になって歌詞でしか表現できない感情のインパクトっていうか、それを感じる曲なんで、この曲を選びましたね。リリースから時を経ても未だに名曲だなっていうか、輝きが褪せないなって感じますね。
J そうですね。この曲は冒頭の「タタン!」っていうドラムのフレーズから始まるんですよ。さらに詳しく再現すると(ドラムの)タタン、(ギターの)ジャッジャッジャジャー って感じで曲が始まるんですけど、リミックスの話をすると、最初のドラムのフレーズはオリジナル盤には入ってないんですよ。
S そうすると、レコーディング当時のミックスの際にカットしたフレーズを、もう1回復活させた感じですかね?
J それか、(サビの途中の)♪DA〜 だけど(の後に聴こえるドラムの)タタン!っていうフレーズを(DTMのデータ上で)をイントロにコピペしたのか?もしくは、(オリジナル盤ではカットされたけれど)最初からあのフレーズが本当は存在していて、あれから曲が始まったのか?っていう推測ですけどね。あとね、フロアタムと君はもうドンっていうところとか、あとタンバリンの音がね、結構強めに出てて、スネアの音もずいぶん生っぽくなってるんですよ。スネアの「シャリシャリっていう音色のスナッピーあるじゃないですか。このアルバムの音源には、あの辺の音をちょっと感じるような生っぽさがあって……。だからね、リズムに深みがあるんですよ。
S やっぱり、人間のリズム隊じゃないと出せない味、グルーヴっていうか、それを出したかったのかなと。なおかつ、本当に、一流のミュージシャンの方をレコーディングに呼んでるので、それが奏功しているのかなと思いますね。
J でもね、「DA・DA・DA I LOVE YOU」Iを聴くと、やっぱりそれぞれの楽器の個性を強く出してるんで、やっぱりバンド・サウンドだっていうのを強調したかったんだろうなって感じはしますね。じゃ、曲紹介を! 
S はい、 NOBODYで、「DA・DA・DA I LOVE YOU」。♪〜〜曲が流れる〜〜  

嘘か誠か、「NOBODYのアルバム兄弟説」

J 今夜の『ロッキンスター』は、作詞家の吉里颯洋宗さんをお迎えして、NOBODYの『RESTLESS HEART』を紹介しております。それでね、前回の「NOBODY特集」でも言ったような気がするんですけど、「NOBODYのアルバム兄弟説」っていう持論がありまして……。ファーストとセカンド、『NOBODY』と『POP GEAR』が兄弟(関係)のように感じるところがあるんですね。どういうことかと言えば、そしてやっぱファーストで(ルーツミュージックの)マージービート系のサウンドを提示して、『POP GEAR』ではそれに日本語の歌詞を乗せたらどうなるか?みたいトライアルをしたように感じてまして。なので、3枚目の『NIGHT WALKER』と4枚目の『From A Window』も兄弟。いよいよ自分たちのオリジナリティを出しつつ、コンピューター(DTMのメリットを生かしたアレンジ)で攻めるという共通点をどちらのアルバムにも感じるんですよね。
5枚目の『RESTLESS HEART』と6枚目の『GOT A FEELING』もまた兄弟じゃないかなって思えるんですね。だけど、リアルタイムでオリジナル盤を聴いていた当時はあんまりそう思わなかったんですよ。今回ご紹介しているリミックス盤の『RESTLESS HEART』では、やっぱりボーカルが立ってて、ギターをどんと前に出してるじゃないですか?これ、『GOT A FEELING』の雰囲気にも似てるんですよ。多分ね、このアルバムのリミックスから感じ取れるのは「まず、1人の(メイン)ボーカルがまず歌ってますということを再認識させつつ、ここから本当にギターバンドとしての僕らのスタートだったんだ」っていうメッセージを改めて出したんじゃないかな、強く打ち出したかったんじゃないかなっていう気がしてますね。リアルタイムで聴いた当時は「『From A Window』のコンピューター(打ち込みのサウンド)の名残が少しあったのと、この『RESTLESS HEART』では(レコーディングが)生音(主体)になったっていうところで、(サウンド・メイキングのコンセプトは)双方の中間を取った感じだったのかな?」っていうふうに勝手に推察してたんですけどね。でもね、「DA・DA・DA I LOVE YOU」を聴くと、やっぱりそれぞれの楽器の個性を強く出してるんで、やっぱりバンド・サウンドだっていうのを強調したかったんだろうなって感じはしますね。
レコーディング・メンバーの話をしますと、今回の『RESTLESS HEART』から、(レコーディングのスタイルが)いわゆる生演奏というか、それにシフトしていて、ベースギター&コーラスの長沢ヒロさんとシンセサイザーの寺田正彦さんが参加されてますが、この2人は(リリース当時の)ライブにも一緒に参加してるはずなんですよ。ドラムの渡嘉敷祐一さんはロック系ではない方でしたっけ?
S 主にジャズ系、いわゆるジャズ・ドラマーと呼ばれるようなキャリアの方だったかなと思うんですけど、でもオールジャンル演奏できる、そういう方だと思います。
J なんかフィルの感じとかが、先ほど流した「DA・DA・DA I LOVE YOU」でも、♪ダ、ダダン、ダダンといかないで、♪チキチチッチ、ツック、タンタみたいな、すごくシンプルなドラミングになっていて……。デヴィッド・ボウイの最後のアルバムの『BLACK STAR』も、ジャズ畑のメンバーで、(レコーディングを)確かやってるんですけど、何とも言えない不気味なドライヴ感というか、静かなんだけど熱いみたいな独特なノリがあって、なんかそれが全体に『RESTLESS HEART』にも漂ってるかなっていう……。
S 今にして思えば、ちょっと変わったテイストっていうか、これまでにないニュアンスが欲しかったんじゃないすかね。NOBODYのお2人はいわゆるギンギンのロックンロールからキャリアをスタートしてますけど、「せっかくの生バンドでレコーディングするチャンスだからこそ、このメンツじゃないと表現できないグルーヴを出したい」みたいな意図があったのかな?っていう推測ですけど。

木原さんの「エデンの東」はいずこに?

J 次に紹介する曲は、僕が好きだという曲で選曲した「BLUE IN PARADISE」。これは木原さんが歌ってる曲ですけども、最初オリジナル盤で聴いたときには、「ふう〜ん」っていう感じだったんですよ。だけど、この後にね、ライヴアルバムの『NOBODY LIVE 2(1987年)』を出すんですよ。僕、この(ライヴ盤に収録された)ツアーは、コンサートに行ってまして、ライヴで聴いた時にはすごいドライヴ感がある曲だったんですよ。それで「なんだ、(サウンドが)カッコいい曲だな!」という新たな印象を持ったんですよね。今回のリミックスを聴いてそれを思い出したのも選曲理由です。オリジナル盤だと、割と音全体が何かワイドな感じにミックスされてるんですよ。それに対して、リミックスの方は割と一つひとつの音をあまり広げすぎないで、キュッと真ん中に寄せた仕上がりで、心なしか、木原さんのボーカルもリバーヴが少なめのような感じがするんですね。リミックスになって気がついたんですけど、間奏で聴こえる ♪ズンズンッチャ、ンッカー、ンッカー、ンッカーってそういうカッティングのギターを(バッキングで)やってるんですよ。それに加えて、コンプレッサーかかったような柔らかい音で、♪ンッキャ、ンッキャって弾いてるパートも聴こえるようなミックスになりましたよね。ギュッと全体のサウンドが締まったことによって、このカッティングの音がクローズアップされて「この音色で、あのビートルズのカッティングをココで持ってくるか!」っていうことに、結構びっくりしたのを覚えてるんですけど。唯一ふわっと広がって聴こえるのが、(サビの)♪BLUE IN PARADISE〜 のフレーズの(3度)上のハモリがすごい綺麗にふわ〜っと(余韻が)残るんですよ。ここがね、結構ポイント高くて(推しました)。
S かつて、ライヴで聞いたライヴアレンジのヴァージョンと、今回のリミックスされた後のサウンドの感じっていうのは近いんですか?
J ん〜、たぶん!心に訴えてくる感じは似てました。改めてオリジナル盤を聴いたら、当時聴いた感じだけど、やっぱり、こっち(リミックス盤)の方がライヴっぽいなっていう風には思いましたね。歌詞の印象はどうですかね?
S 歌詞はかなり哲学的なテイストというか、この「エデンの東」っていうこのサブタイトルも聖書の一節っていうかそれを感じさせますけど、ポップソングとしては相当深い世界観を歌ってますよね。歌詞だけをじっくり読むと、「もしもある朝空を飛べたら 海を渡って遠くへ行こう 悩み多い地上を離れ もしも何もない島があったら 鳥を相手に暮らしてもいい 波の音と風を聞いて」……。なかなかポエティックっていうか、詩的だなっていう印象ですね。木原さんの作風として、ちょっと社会風刺的なメッセージソングであったり、ロマンティックな感じの失恋ソングのラインもあるんですですけど、それとまたちょっと違うテイストですよね。難しい言葉で言うと寂寥感があるっていうかワビサビのある世界観で、なおかつ情景が目に浮かぶような描写がシンプルな言葉使いながらすごく美しく実現できてるので、「木原さんは詩人だなぁ」と改めて思いましたね。この曲の歌詞の中で好きなラインが3行あって、「風に飛び立つフラミンゴの群れと影一つない青空の下 自由なのにどうして悲しい……」って箇所なんですけど・・・。
J 俺も好き(笑)。
S いや、今さらながら、こんな名曲を書く木原さんとお会いして、よく写真とか撮れたなと思って(笑)。
J (笑)。いや、♪風に飛び立つフラミンゴの群れってフレーズがね(何とも言えなくて)。だって、青空に向かってピンク色(のフラミンゴ)が飛び立つわけでしょ? あれはドラマティックですよ。
S 描かれているのは、『エデンの東』というサブタイトルからして、日本の中の風景じゃないよねって思いますよね。
J 木原さんが歌うが『エデンの東』が何処なのか、分かんないですけどね(笑)。ひょっとして、葛飾区か?違うか(笑)。改めて曲をお願いします!
S はい。NOBODYで「BLUE IN PARADISE」。♪〜〜曲が流れる〜〜 

遂に蔵出し、「HONEY, DON'T GO」

J 今夜は、NOBODYのアルバム『RESTLESS HEART』を紹介しております。今聴いてもらったのは、「BLUE IN PARADISE」でした。次に紹介する「HONEY, DON'T GO」という曲は、颯洋さんが推してる曲ですよね。
S そうですね。これはボーナストラックで入ってる曲なので、今回のリイシュー盤で初めて聴いた曲なんですけど、英語詞で歌われている一連の曲と同じように、仮の歌詞として英語詞が曲なので、楽曲は完成していながらファンに聴かせるための日本語の楽曲としては「未完成感」みたいなものはあって……。仮の歌詞の英語は歌詞カードにも載ってないんですけど、すごくメロディーのクオリティが高くて、「なんでこの曲がアルバム作っていた当時、収録されずに漏れたのかなって不思議に思うぐらいすごいいい曲だったので、ぜひご紹介したくて選びました。なかなかの名曲で、「なんでこれ、アルバムに入らなかったの?」って疑問が拭えなかったといういわくつきの曲でもあります。実は、自分が感じたクエスチョンがライナーノーツでも書かれていて・・・。
J ちょっと待ってください。僕ね、あえてそれを読んでないんですよ、いっつも。僕なりに推理したんすよ、今回。今回のリミックスを聴いて、アルバム全体がギターサウンドになってるんで、それの延長で聴くと、この曲はアルバムに合うんですよ。結構アコースティックな感じがあって……。ところがオリジナル盤のミックスの時はもうちょっと(サウンドを)ふわっとさせてる感じがあったんで音の毛色として、ちょっと合わなかったのかなっていうのと、あと若干ビートルズのような雰囲気を彷彿させる感じが僕は感じたんですね。それがやっぱり、何か新しい境地を出そうとしてるこのアルバムに入れるとなると、ちょっと以前のテイストに戻っちゃってるかな?
S なるほどね!そう言われてみれば……。
J のような気がするんですよ。
S 言われてみれば、ちょっとマージー・ビートっぽいのかなみたいな気もしますね。マージービートっていうか、CCR的なアーシーなテイストというか、70年代的な懐かしみのある曲というか……。
J  たぶん、この曲はやっぱり、曲としてクオリティがいいので(改めて価値が見直されて収録されたのかと)。この後、1990年に沢田研二さんが『単純な永遠』っていうアルバム出してるんですよ。そのアルバムに収録されている「月のギター」っていう曲をNOBODYが提供してるんですけど、(セルフカバーアルバムの)『NOBODY SONGS』ってアルバムに収録されている「ALL ALONE」が「月のギター」の原曲なんですけど、その曲のサビの部分は「HONEY, DON'T GO」のサビの部分から流用してるんじゃないかって感じなんですね。で、ライナーには何て書いてるんですか? 答え合わせとして知りたくなりました。
S 山田順一さんがインタビュアーでNOBODYのお二方に聞いてるんですけど、「未発表曲の『HONEY, DON'T GO』は、なぜアルバムに入れなかったのでしょう? これまで発表のチャンスはなかったのですか?」って聞いてらっしゃって、相沢さんが、「これは本当に謎ですね。今回の再発見で聴き直してみると、曲の構成が決まりきっていない感じは若干あるけど、日本語の歌詞の完成が遅れたのか、何か他の理由があったのか、その後、曲の存在自体が忘れられてしまって……。でも今回の企画で長い眠りから起こされて、陽の目を浴びたわけだから本人も喜んでることでしょう(笑)」って書いてあって……。さっき佐々木さんがご自分の推理として話してくれた内容は、自分もすごく腑に落ちるというか納得できる感じだったんですけど、当の相沢さんは「謎ですね」って言ってるんで、「えー、そうなの?」というオチでしたね(笑)。
J 謎なんだ(笑)。
S 「なんかこの曲だけちょっと他の曲と並べてみると、浮いちゃうから」とか、そういう分かりやすい答えを期待して読んでたら全然違ったっていう(笑)。
J 違いましたね(笑)。俺たち、深掘りし過ぎなのか(笑)?
S まぁ、でも、あながち外れてないのかなっていう気がしないでもないですけどね。ご本人的にはこういう感じだけど、もしかしたら周りのスタッフの方も含めてシークエンス(曲順)を決める際に収録曲をいろいろ並べてみて、「この曲はちょっと違うかな?」みたいな意見を言ったかもしれないとか妄想しました(笑)。
J かもしんないっすね。改めて、曲紹介をお願いします。
S NOBODYで「HONEY, DON'T GO」。♪〜〜曲が流れる〜〜 

J 今夜の『ロッキンスター』は作詞家の吉里颯洋さんをお迎えして、NOBODYの『RESTLESS HEART』のリイシュー盤を紹介いたしました。今、曲を聞きながら颯洋さんと話ししてたんですけどやっぱこの「HONEY, DON'T GO」は、ルーツ・ミュージックの色合いが強いかなという印象はありますね。
S そうですね。私見ですけど、なんかアメリカ南部のちょっとアーシーな感じっていうか、そんな薫りも漂っているような気もしますね。
J そっちかなぁ?もしかしたら……。だからこの曲のテイストは好きですよ。すっげぇ好きなタイプの曲で、相沢さんは「(なぜ収録されなかったのか)謎だ」と言ってるかもしれないけれど、トータルで見た時にやっぱりちょっと(このアルバムの他の収録曲とは)合わないかなって気もしないでもないっていう……。
S そうですね。キャッチーなんだけど、他の曲と比べると違うキャッチーさなんですよね。
J うん、(選曲漏れした理由として)ありえますね。えーと、話が変わりますが、颯洋さんがこの『RESTLESS HEART』のリイシュー盤を間違って2枚買ってしまったと打ち明けてくださって、「どうしましょう?」っていうふうに相談がありましてですね。「いっそのこと、NOBODYクイズでも出して、リスナーの方にプレゼントしましょうか?」っつったらば、颯洋さんが悪ノリしてきましてですね、「やろう、やろう!」なんてことになりまして、次回、およそ2ヶ月後ですけども、『GOT A FEELING』の特集の時に、この『RESTLESS HEART』のプレゼント企画をやろうかと計画してます。
J そうですね。
J それまでに「NOBODYクイズ」考えません? (内容は)どうします? ちょっと上級者的な感じにしましょうか?
S ある参考文献を1冊ぐらい読めば、多分解けるかなみたいなっていうくらいが良い按配かなと(笑)。
J ってふうなレベルで? 分かりました!
J はい、それぐらいのレベルで!
J という訳で、今夜の『ロッキンスター』は作詞家の吉里颯洋さんをお迎えして、NOBODYのアルバム『RESTLESS HEART』を紹介いたしました。ありがとうございました!また2ヶ月後、お会いしましょう!
S ありがとうございました!お世話になりました。
J それでは皆さん、また来週!  ♪〜〜「JOHNNY BE BAD」の曲が流れる〜〜

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『FUZZ FUZZ FUZZ』
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過去のオンエアのトークは、以下の記事で公開しています。

【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#05 『From A Window』

【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#04 『NIGHT WALKER』

【ほぼ全文掲載】「ロッキンスター」NOBODY特集_#03 『LIVE ワン!』